ネクリア:ヒイカー?どこー?
ヤズネ:どこにもいないでやすね。
ウミナギ:アルトアァ、何か感じるかァァ?
アルトア:いや、ここらではないようだ。
ウミナギ:あのガキもいねェしよォ。
ネクリア:どこにいるのかしら…
   ネクリアたちは、あまりにもヒイカたちの帰りが遅い為、捜していたのだった。
ウミナギ:アルトアァ、感じたらいつでも言えよォォ?
アルトア:わかっている。
ハリイノギョ:アルトアはんの範囲ってどのくらいなんや?
アルトア:結構狭いものでな、それなりに近づかないと意味がない。
ハリイノギョ:そうなんか…
ジャング:ミョンガー、ヤズネ、何か聞こえないか?
ミョンガー:ん~、僕は特に何も~?
ヤズネ:わちきもでやす。
ネクリア:どこにいるのよ…
ペライト:ダレカツイテイクベキダッタナ。
ソルト&シュガー:そうだねー。
ジャング:よし、また手分けして捜そう。絶対に二人以上で捜すんだぞ!
ハリイノギョ:はいな!
   どこか
ヒイカ:(…冷たい…何?)
   ヒイカはどこかで目が覚めたが、目隠しをされていてどこかわからなかった。
ヒイカ:んー(口も塞がれて喋れないわね…。にしても、冷気?寒い…)
   ヒイカは技を使おうとした。
ヒイカ:(『虹色の花束!』…って、体に全然力が入らないからできるわけないわね…。どうしよう?)
   ゴーッ
ヒイカ:(この音…何の機械?いや、この冷気、この音…まさか、冷蔵室!?だとしたらまずい!このままじゃ…寒さでやられる!)
   ヒイカはじたばたしたが、気力を奪われていてまともに動けなかった。
ヒイカ:(自力で抜け出すことは不可能に近い…はぁ、ネクリアたちに任せるしかないわね…)
   ネクリア側
ネクリア:ヒイカー!どこなのよー!
フバクノソラワ:いませんね~、もしかしたら犯人に殺されちゃってたりして~?
ネクリア:縁起でもないこと言ってんじゃないわよ!
フバクノソラワ:は、はいっ!
ネクリア:(でも、どこにいるのよ…ヒイカ!)
?:うわあああーーーーっ!!
   どこからか悲鳴が聞こえた。
ネクリア:何!?
ソルト&シュガー:あっちから聞こえました!
   ネクリアは悲鳴の聞こえた場所へと走った。
フバクノソラワ:あ!待ってくださいよーっ!
   屋敷の入口まで出てきた。
ネクリア:執事!
   悲鳴をあげたのは、執事だった。
ジャング:どうしたんだ?
執事:よくわからない…変な生き物が襲いかかって来たんです!
ネクリア:ヒイカは!?あんた、ヒイカはどこよ!?
執事:ヒイカさんは、その生き物を追って行きました…
ヤズネ:どっちでやす?
執事:あちらです!
   執事はデタラメな方向を指差した。
ネクリア:あっちね!行くわよ!
ジャング:ああ!
   ネクリアたちは走って行ってしまった。
執事:…フッ。(馬鹿め、せいぜい捜しまわるがいい。さてと、この間にお嬢様を移動させなくてはな。)
   執事は自分の部屋へ行き、クローゼットからトレアお嬢様を連れ出し、車のトランクに入れた。
トレア:ん~ん~!
執事:大丈夫ですよ、お嬢様。怖くありませんよ。
   バン
   執事はトランクを閉め、運転席に乗った。
執事:フフッ。
?:何がおかしいんだよ?
執事:!?
   執事が後部座席を見ると、男の子が乗っていた。
執事:い、いつの間に!?
男の子:ひつじさんが犯人だったんだね。お嬢様をよくも…!
執事:いや、いやいや、何かを勘違いしているみたいだね!私はお嬢様を見つけたから、安全な場所へ移動させようと…
男の子:だったら、なんでお嬢様を縛ってるの?
執事:そ、それは…
男の子:ひつじさんにはがっかりだよ…お嬢様を守ってくれるって信じてたのに!
執事:くっ!(こうなったら…)
   執事は縄を取り出した。
執事:大人しくしてもらいますよ。
男の子:う、うぅっ…許さない!わーっ!
   男の子は執事に飛びついた。
執事:こら!大人しくしなさい!
男の子:わーっ!
   男の子は執事の頭を叩きまくった。
執事:この…いい加減にしろ!
   ゴッ
   執事は男の子の頭を殴った。
男の子:うっ…
執事:痛い思いをしたくなければ、大人しくしろ!
男の子:うぅ、わぁぁぁぁー!!
   男の子はクラクションを足で蹴った。
   ビィーーーーーーーーーーーーーーー
執事:やめろ!
   執事は男の子を押し飛ばした。
執事:(まずい、大きな音で誰か来る前に移動しなくては!)
   執事は車のエンジンをかけた。
執事:(だが、その前に…)
   ガチャッ
   執事は車のドアを開け、男の子を外に向かって投げた。
男の子:うわぁぁ!
執事:フッ。
   バン
   執事は車のドアを閉め、車を発進させた。
男の子:お…嬢さ…ま…
フバクノソラワ:(う~ん、ネクリア様たち走って行っちゃったし、外に出たっぽかったよなぁ~。僕は早く走れないって知ってるはずなのにひどいなぁ。)
男の子:はぁ…はぁ…
フバクノソラワ:え!?(あれは、さっきの男の子!?でも、なんで怪我してるの~!?)
   フバクノソラワは男の子に近づいた。
フバクノソラワ:ど、どうしたの~?
男の子:あ、お、お嬢様を…助けて…!お嬢様が…お嬢様がぁぁっ!
フバクノソラワ:ちょ、ちょっと待って~!ネクリア様を呼んでくるからねっ!
   フバクノソラワはよちよちと歩いてネクリアたちを捜しにいった。
   そして数十分後
ウミナギ:ガキ!!大丈夫かァァ!?
   ウミナギは男の子に駆け寄った。
男の子:お嬢様…助けて…お嬢様を…
ネクリア:お嬢様なら私たちも捜しているわよ、でもまずはヒイカを…
ジャング:それより、あの執事はどこに行ったんだ?
男の子:ひつじ…敵…お嬢様が…あぶな…
   男の子は気を失ってしまった。
ネクリア:ちょっと!しっかりしなさい!
ヤズネ:んおお?これは…
   ヤズネは男の子が手に握っていた機械をとった。
ペライト:アレ?ヒトツシカナイ?ソレッテタシカ、フタツアッタハズ…
ノット:片方、無くなっても、探せる。
ヤズネ:そういえばそんなこと言ってたでやすね。もう片方はどこに行ったんでやすかね?
   ピッ
   ヤズネはボタンを押した。
   ヴィーン
   機械の画面に地図が表示され、地図内に移動する赤い点があった。
ウミナギ:なんだァァ?
ヤズネ:…執事が敵、片方を探知…まさか!
アルトア:この赤い点がもう片方で、執事はお嬢様を連れて逃げてるということか!?
ネクリア:なんですって!?
ジャング:このスピード、車か何かだな。
ソルト&シュガー:ってことは、車の中にその片方を入れて、その時に執事と争いになったってとこかなー。
ハリイノギョ:せやったら早く追わな!
ジャング:そうだな!探知が範囲外に行ってしまったらおしまいだ!
ネクリア:ま、待って!
ジャング:どうした?
ネクリア:ヒイカは…?ヒイカはどこなの!?お嬢様を連れているのが執事だったら、ヒイカはどこに行ったの!?
ヤズネ:たしかに、虹使いはどこに…
ジャング:…こいつがここで倒れていて、執事がお嬢様を連れて逃げた。ということは、お嬢様は屋敷内にいたということだ。つまり…
ネクリア:ヒイカは屋敷内のどこかに閉じ込められている!?
ジャング:可能性は高いな。
ネクリア:ヒイカ…!
   ネクリアは屋敷に戻ろうとした。
ジャング:待て!
ネクリア:何よ!
ジャング:たしかにヒイカを捜すのも大切だが、今はお嬢様を救うべきじゃないのか?
ネクリア:でも、ヒイカはどんな目にあっているか…
ウミナギ:だったらよゥ、こうしようぜェ。ヒイカを捜す組と、お嬢様を取り返す組に分かれて行動すんだよォ。
ミョンガー:いいね~!
ネクリア:じゃあ私はヒイカを捜すわ!
ジャング:俺は執事を追う。他の奴も早く決めろ。
ヤズネ:わちきも虹使いを捜したい…けど、虹使いならきっとお嬢様を優先させろって言うから、わちきはお嬢様を助けるでやす!
ミョンガー:じゃあ、同じ力ある僕はネクリアと一緒に捜そうかな~。
   捜索組→ネクリア、ミョンガー、ハリイノギョ、フバクノソラワ、ソルト&シュガー
   追跡組→ジャング、ヤズネ、ウミナギ、三憑
   捜索組
ネクリア:とりあえず、手分けして屋敷内をくまなく捜しましょう!
ミョンガー:でもさっきも捜したよ~?
ネクリア:もっともっと!ボタン押したら隠し扉ありましたーってくらい細かくよ!
ハリイノギョ:ネクリアはん、ちょっと落ち着きなはれ。気持ちはわかるけど、取り乱してどないすんねん。
ネクリア:…そうね、ごめん。
ハリイノギョ:よし!捜すでー!
ソルト&シュガー:じゃあ僕たちはあっち捜しますー。
フバクノソラワ:僕はこっちかな~っ?
ミョンガー:僕はこっち行くよ~。
ハリイノギョ:わいはこっち捜すさかい、ネクリアはんはそっち任せたで。
ネクリア:ええ!
   追跡組
ウミナギ:おいジャングゥゥ、このまま走ってたって追いつけねェぞォォ?
ジャング:いや、車は何故か人も通らないような山へ入った。だからそろそろ…
   赤い点は山の中で止まった。
ヤズネ:止まったでやす!
ジャング:ほらな。そこまで行けばすぐにでもお嬢様を救い出す!
ウミナギ:おゥ!
   そして、三人と三憑は探知した場所にたどり着いた。
ウミナギ:小屋があるなァァ。
ジャング:きっとそこだろう。戦闘態勢をとっておけ。
ヤズネ:先発は任せろでやす。最初はわちきがあの執事の目を見えなくしてやるでやすよ!
ジャング:よし、突入だ!
   小屋内
トレア:ん~ん~っ!
執事:大丈夫ですよ、お嬢様。すぐに…楽にして差し上げますからね。す、ぐ、に…
トレア:ん!?ん~?
   バン
   扉が大きく音を立てて開いた。
ヤズネ:やい執事!そこまででやすよ!
   しかし、そこには倒れた執事しかいなかった。
ジャング:どういうことだ?お嬢様は!?
アルトア:感じる…天井だ!
ウミナギ:天井ゥ?
   ウミナギが上を見ると、天井からお嬢様が見ていた。
ウミナギ:いた!
トレア:…フッ。
   ザシュッ
   トレアお嬢様は天井から降り、長くのびた爪でウミナギを斬り裂いた。
ウミナギ:がぁッ!?
ペライト:ウミナギ!!
ヤズネ:こいつめっ!
ジャング:待て!様子が変だ!
トレア:フフッ。ついに手に入れたぞ…トライフェーン一の力を持つ、トレア・トライフェーンの体を!
ヤズネ:どういうことでやす?
ジャング:これは…?まさか!
ウミナギ:あァ、執事は犯人なんかじゃねェ!本当の犯人は、憑き物だ!
アルトア:しかも、俺らのようなただ憑く憑き物じゃなく、体の持ち主の意識をも奪う強力な憑き物だ!
トレア:フフッ。
回想~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
   昨日の午後
執事:お嬢様~、紅茶をお持ちしました。
トレア:ありがとう。そこに置いて。
   執事は机の上に紅茶を置いた。
執事:トレアお嬢様、本日の夕食は市民のデパートから取り寄せた、焼きそばという麺類の食べ物です。
トレア:そう、それは楽しみね。
執事:しかし、お嬢様のお口に合うかどうか…
トレア:口に合うかどうかが問題じゃないのよ。市民とも関わりを持ち、上に立つ者として市民の食べ物や文化を知っておく必要があるの。
執事:お嬢様…ご立派にございます!
トレア:うふふ。あなたもいつもお世話してくれてありがとうね。感謝しているわ。
執事:いえいえ!これは私の役目!当然の事にございます!私、この生涯お嬢様にお仕えすると心に決めております!
トレア:大げさよ。
執事:大袈裟ではございません。
??:フフッ。
執事:むっ!?(何か声が?)
   すぅー
   黒い塊がお嬢様目掛けて飛んできた。
執事:お嬢様!お逃げください!
トレア:あっ!
   ずぅ…
   執事はトレアお嬢様の盾になり、黒い塊は執事の体に入って行った。
トレア:…だいじょう…ぶ?
執事:…フッ。大丈夫ですよ。お嬢様。
トレア:そう?本当に?
執事:ええ、それとお嬢様、少し目を瞑っていてもらえますか?
トレア:え?どうして?
執事:お願いします。
トレア:…
   トレアお嬢様は目を閉じた。
執事:フッ。
   執事は縄を取り出し、トレアお嬢様を縛った。
トレア:な、何をするの!?
執事:この執事の邪魔さえなければ、俺はあんたの体に入ってたんだ。由緒正しきトライフェーン家の末裔、トレア・トライフェーン!
トレア:あなた…一体…?
執事:歴代のトライフェーン家で一番強力な力を持って生まれたトレア・トライフェーン、お前の体に入り、俺はその強力な力で世界を支配する!
トレア:そん…な…
   トレアお嬢様は気力を奪われ、気を失ってしまった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
トレア:俺自身の力は小さい。1度憑いてしまえば1日は憑く力を使えない。だからこそ、この執事の能力を使い、憑く力が復活するまで待ったんだ。
ジャング:だったら、屋敷の中で憑けばよかったんじゃないか?
トレア:俺だってそうしたかったさ。だが、お前たちが邪魔だったのだ。だからこそここまで来たというのに、お前たちは再び俺の邪魔をしに来た!
ジャング:当然だ。お嬢様を救う事が今の俺たちの使命だ。
トレア:フフッ。残念だがそれは不可能だな。なぜなら、既にこの強力な力は俺のものになったからだ!
ヤズネ:強力な力…ねぇ、わちきが狂わせてやってもいいけど?
ウミナギ:おい待て、てめェの力は軽く聞いたが、それじゃお嬢様も狂わせるんじゃあねェのか?
ヤズネ:うあー、まぁそうでやすけど…
アルトア:つまりこれは、お嬢様を傷つけず、あの憑きものを追い出さないといけないってことか。
ウミナギ:ちッ、めんどくせェ!
トレア:フフッ。丁度いい、この力をお前たちで試してやろう!かかってこい!
ヤズネ:でも、傷つけずにって…どうすればいいんでやすか?
ジャング:…わからん。
ヤズネ:えぇ!?
トレア:来ないのなら、こちらから行くぞ!
ペライト:クルゾ!
執事:させません!
   ガシッ
   執事はトレアお嬢様を後ろから抑えつけた。
ジャング:執事!
執事:覚えています!本当にあなたがたには申し訳ないことをした。そんな方にお願い事など厚かましいですが…でも、お嬢様を助けたいんです!お願いします!助けてください!!
ウミナギ:へッ、言われなくてもそうするってんだよォ!
アルトア:だが、どうする?下手に攻撃はできないぞ?
執事:気を付けてください!トレアお嬢様の能力は、「再現」です!
ジャング:再現?
執事:トレアお嬢様は、一度見た技なら全て自分が使うことができるのです!
ウミナギ:なんだとォ!?
ジャング:厄介な能力だな…
トレア:おいお前、いつまで抑えているつもりだ?
執事:お嬢様の体から出ていくまでだ!
トレア:フッ。この体の持ち主の能力を知っているだろう?はっ!
   ぶわっ
   トレアお嬢様から強烈な風が吹き、執事は吹き飛ばされてしまった。
執事:ぐっ…
トレア:さぁ、早く攻撃してこい!それが力となるのだ!
ジャング:能力が再現とわかっていて攻撃などするはずがないだろう?
トレア:強情なやつめ。だがまぁいい、今までこいつが見てきた記憶の中から、強力な技を取り出そう。
執事:やめ…ろぉぉ!
トレア:おぉ、いい技が見つかった。『アクアニードル!』
   ビュンビュン
   水の針が大量にジャングたちに襲いかかった。
ジャング:(数が多い…だが、技で防げば相手が自分のモノとしてしまう!どうすればいい!?)
?:だったら、相手がマネる前に倒せばいいのよ。
??:その憑き物…私が完全に消し去ってあげるわ。
?:『金の鳥飛翔!』
??:『虹色の花束!』
   大量の金の鳥と虹色の花弁が、水の針を撃ち消した。
トレア:お前!助かったのか!?
ヒイカ:ええ、よくもあんなことしてくれたわね~?
ヤズネ:虹使い!
ネクリア:さぁ、さっさとそこから出て行ってもらうわよ!
ジャング:ネクリア!
                                     続く
 
2011年3月29日作成