ヒイカ:……
   ぞろぞろぞろぞろ
ヒイカ:……
   ぞろぞろぞろぞろ
ヒイカ:……
ネクリア:どうしたの?不機嫌そうな顔して。
ヒイカ:どうしたもこうしたもないわよ!何なのよこの量は!?
   港町を出たヒイカたちだったが、その進む道々にネクリアの手下たちが見つかり、いつしか集団行動になっていた。
ネクリア:いいじゃない。私の可愛い手下たちよ~♪
手下:わーっ!ネクリア様ーっ!
ヒイカ:(うるさっ!)
フバクノソラワ:ネクリア様~、お腹すきました~。
   丸い体に大きな目の生物がネクリアに話しかけた。
ネクリア:もう少し我慢しなさい。
フバクノソラワ:え~っ!お腹すいたぁ~!すいたぁ~!
   フバクノソラワは小さな手をバタバタさせた。
ラブル:うるさいなー駄々っ子!僕のネクリア様が困るだろ?
   丸い体に羽を生やした、片牙だけの生物がフバクノソラワとネクリアの間に割って入った。
ラブル:ね?ネクリア様?
   ラブルは篤い目でネクリアを見つめた。
ネクリア:そ、そうね。
ヒイカ:(あいつ、ヤズネに似てるわね。まるで兄弟みたい。耳はないみたいだけど。)
フバクノソラワ:なんだよ~っ!お腹すいたんだからしかたないじゃ~ん!
ラブル:それがネクリア様に迷惑だってわかんないかな!?
ヒイカ:ネクリア、うるさい。黙らせないと消すわよ。
ネクリア:ちょっ!?あんたたち、喧嘩は止めなさい!
フバクノソラワ&ラブル:だってこいつが!
ネクリア:だってじゃない!
ウミナギ:ちッ。少しは静かにできねェのかよ。
ラブル:なんだとー!ちょっとネクリア様に会うのが早かったってだけで四天王になりやがってー!
ウミナギ:あんだとォ!?てめェ喰ってやろォかァァァ!?
ネクリア:だーから静かにしなさいって!
ヤズネ:お前も大変でやすね~。
ネクリア:まったくだわ…でも、私が上に立つって決めたんだもの、これくらい、可愛い手下たちのためなら、ね。
ラブル:ネクリア様…かっこいいです!流石は僕のネクリア様ー!
フバクノソラワ:何が僕のネクリア様だよっ!ネクリア様は誰のものでもないの~っ!
ラブル:最初に僕がネクリア様に会ってれば僕が側近だったんだから僕のネクリア様だ!
フバクノソラワ:そんな屁理屈~!
ヒイカ:…ネクリア~?
ネクリア:ひっ!(ヒイカがお怒りだわ!)あんたたち、マジで静かにしないと消されるわよ!?
   そんなこんなで不機嫌なヒイカを先頭に次の町到着。
ソルト&シュガー:あ、ネクリア様!
ヒイカ:(また手下…)
ネクリア:あら、あんたたちこんなとこにいたの?
   目があるのかよくわからない、細い手(紐)で剣を持った浮いてる生物と、片手が扇、片手が針のように尖った生物が寄ってきた。
ソルチ&シュガー:ネクリア様!お会いできて嬉しいです!
ネクリア:あんたたちも相変わらず、息ぴったりね。
ソルト&シュガー:もちろんです!僕ら、2人で1つ!ソルト&シュガー!!
ヤズネ:砂糖と塩?こしょうはどこでやす?
ジャング:そんな奴はいない。
ヤズネ:ちぇ~っ。
ハリイノギョ:にしてもどんどん増えてくな~。
ミョンガー:そうだね~。僕ら影薄いから埋もれるね~。
ジャング:お前らは四天王なんだから堂々としてればいいんだ。
フバクノソラワ:ネクリア様~!ご飯食べましょ?食べましょ?
ネクリア:そうねー…ヒイカ、どこで食べる?
ヒイカ:こんな大勢でどれだけ出費があると思ってんのよ。あんたが払うの?
ネクリア:しかないわね~…でもさすがにキツい…ファーストフードにしましょうか。
フバクノソラワ:え~っ!もっと豪華な料理が食べたいです~っ!ネクリア様~っ!
ラブル:無茶苦茶言うな!ネクリア様だって家計が火の車で大変なんだ!
ネクリア:家計って何の話よ?
フバクノソラワ:食べたいものは食べたい!た~べ~た~い~っ!
ウミナギ:文句あるんだったらてめェ一人で行動すりゃいいだろ。これまでネクリアに会うまで、再会するまでは一人で生きてたんだろォ?
フバクノソラワ:うるさいな~っ!憑き物の成り上がり妖怪のくせに偉そうに~っ!
ウミナギ:あ゙ぁ゙!?てめェら一度全員立場をわからせる必要があるようだなァァ…
ジャング:やめろウミナギ。お前達も挑発するな。
ラブル:なんだよ、本当なら僕が側近だったんだ!偉そうにするな!
ジャング:お前のような短気な奴に側近は務まらない。自分をまず知れ。
ラブル:偉そうに…
ヒイカ:側近も大変ね。
ジャング:まぁな。
ミョンガー:あ、いいお店みっけ~。
ハリイノギョ:ホンマや!
フバクノソラワ:え~っ!ファ~ストフ~ドじゃ~ん!
ハリイノギョ:あれはうまいんやって、騙された思って食ってみ?
ヒイカ:ふーん、じゃあ食べてみようかしら?
ネクリア:それじゃあそこに決定ー!
フバクノソラワ:そんな~っ!
   ファーストフード店
ヒイカ:へぇ、中々いいじゃない。
ハリイノギョ:せやろ?このお店はチェーン店でな、どのお店もめっちゃうまいんや!
ヒイカ:そうなの?覚えておくわ。
ミョンガー:でさ、君はどう~?美味しい?
フバクノソラワ:…まずくはない。
ミョンガー:素直じゃないな~。
ヒイカ:ネクリア、あんたもうちょっと手下はきちんとまとめないと、こんなんじゃ戦力云々の問題じゃないわよ?
ネクリア:あはは…まぁでも、私を慕ってくれる人を突き放すのもね~。数は少しでも多い方がいいもの。
ヒイカ:大は小を兼ねる。たしかに数が多ければ有利だけど、その数を束ねられなければ内側から崩れるだけよ。
ネクリア:わかってるわよ。でも、中々個性豊かでね、束ねるのも一苦労なのよ。
ヒイカ:見てれば大体わかるわ。面倒そうだから私は絶対したくないわね。
ネクリア:あら?一応私ってあなたの手下じゃなかった?
ヒイカ:こんなに対等に話をする手下も不自然なものね。
ヤズネ:言っておくけど、わちきは虹使いの仲間でやすよ☆
ヒイカ:…いつから?
ヤズネ:最初から。
ヒイカ:いや最初は殺しにきてたでしょ。
ヤズネ:じゃああの事件から。
ヒイカ:私は一度も思った事ないけど。
ヤズネ:ひーどぉーい!
ウミナギ:つかよゥ、この鳥何者なんだァ?音消したり目見えなくしたり、普通の能力じゃあねェだろ。
ヒイカ:ヤズネは夜雀よ。ネクリアは気付いてたんでしょ?
ネクリア:ええ、大体予想はついてたわ。
アルトア:夜雀というと、夜に山道で人の目を見えなくして迷わせて、食うという妖怪だな。
ヒイカ:(この憑き物たちって神出鬼没なのね。憑き物だからウミナギ周辺なら出入り自由なのかしら?)
ウミナギ:でもよ、夜雀の能力だったら目見えなくするのは納得だが、音聞こえなくするのは違うだろォ?
ヒイカ:(ここは、言うべきなのかしら?それとも、黙っておくべき?ネクリアだけならまだしも、ウミナギたちには…。いや、ウミナギやジャングたちはネクリアも信頼している。下級の奴らはミョンガーたちと話していて聞いていない。問題ないわね。)
ノット:話せない?
ヒイカ:ヤズネは、[五大狂能力]という狂気の力を持った五人組の一人なの。
ネクリア:ん?どこかで聞いたことあるわね…どこだったかしら?
ウミナギ:俺も聞いたことあるなァ…ペライト、覚えてねェかァ?
ペライト:オレオボエテル。アノトキダ、レジェンダリーフロンティア。
ヒイカ:レジェンダリーフロンティア?何よそれ?
ネクリア:数々の伝説が残された書物が眠るとされる伝説の土地…だった場所よ。
ヒイカ:だった?
ネクリア:私たちはそこに行ってきたの。でも、本当はあそこはあの世への入口だった。もう少し遅れていたら…私たちは生きていなかったわ。
ヒイカ:ふーん…それで?その書物に書いてあったの?
ペライト:イヤ、アノバショニイタロウジンガイッテイタンダ。
   「色々あるぞ?例えば…天を駆ける怪奇の龍、天性の才能を持った狂気の魔術師、生き物を狂わせる五大狂能力…」
ネクリア:あんたよく覚えてるわね。
ウミナギ:ペライトは記憶力がいいんだ。一度見聞きしたものは忘れねェ。
ヒイカ:ウミナギの憑き物って何かと便利な能力持ってるのね。
ネクリア:私も初めて聞いたわ。
ヒイカ:っていうかそれって、その老人から聞いただけで詳しくは知らないってこと?
ネクリア:そうね。というか詳しく知ってたら覚えてるわ。
ウミナギ:あの時誰もその書物は読まなかったのかァ?
ネクリア:んー、多分読んでないわね。ところでウミナギ、ヒイカについての書物はどこにやったの?
ウミナギ:持ってるぜェ。
   ウミナギは書物を取り出した。
ヒイカ:「周囲の色を奪う最強で最凶の能力、虹の力」?前の虹の力の持ち主について書いてあるの?
ネクリア:それもだけど、あなた自身のことも書いてあるわよ?
   その話は数年前、とある大きな国での話だった。
   とある時、小さな女の子が生まれた。その女の子は生まれつき、伝説の能力を持っていた。
   虹の力を持った者が生まれた時は、その者を殺すことは正当防衛とされていた。
   しかし、彼女の親は彼女を殺さなかった。彼女には能力の恐怖を伝えずに育てた。
   彼女はその力の本当の恐怖を知らされないまま育った。しかしとある日、その力で色が消えたのを確認した。
   彼女は親にその事を伝え、真実を知っていた父親は彼女を崖から突き落とした。
   しかし、虹の力により頑丈に出来た体の彼女は生きていた。
   父親は彼女を逃がしたとして殺された。母親も家ごと燃やされてしまった。
   故郷に帰った彼女は激怒した。彼女の虹の力で国は一瞬で滅びた。
   それを知った近隣の国の者たちが彼女を殺そうとした。しかし、彼女を殺すことは誰にもできなかった。
   今でもなお彼女には刺客が幾度も差し向けられている。誰も決して勝てるはずがない。
   そして、彼女はこう呼ばれる…
   [虹の子]緋衣香。と───
ヒイカ:この書物…一体いつ書かれたの?いやそれより、どうしてここまで…?
ネクリア:あの世からはこの世が見れて、それで見ながら書いたらしいわ。その先がないのは、あの世で書いていた本が、この世に来た事であの世の者が書くことが出来なくなったからってジャングが。
ヒイカ:なるほどね。少し強引な話だけど、ここまで書かれていて嘘とも思えないわね。
ヤズネ:だとしたら、その五大狂能力についての書物は、わちきたちのことも書かれてそうでやすね。
ネクリア:でしょうね。しかもまだあの世にあるから、書き続けてるでしょうね。
ヤズネ:うあー…なんだか怖いでやす…
ウミナギ:別に誰も見やしねェだろ。実際あの場所に行って帰って来れたのは俺らくらいだしよォ、そこまで怖がることねェだろ。
ヤズネ:んおお、それならいいでやすけど。
ヒイカ:いいんかい。
ネクリア:そうだ、ねぇヤズネ?私の手下にならない?
ヒイカ:何勧誘してんのよ。
ヤズネ:申し訳ないでやすけど、わちきは虹使いについていくって決めてるんでやす。誘ってくれたことは感謝するでやすよ~。
ヒイカ:あんたの場合はついてくるというより「憑いてくる」ね。
ヤズネ:わちきは憑き物じゃないでやすー!
ヒイカ:さてと、結構長居しちゃったわね。そろそろ出発しましょうか。
ネクリア:それもそうね。でも、どこ行くの?目的もなくふらふら?
ヒイカ:んー…元々特に何も考えてない旅だったから、今はふらふらしかするつもりはないわね。
ネクリア:あらそう?じゃああの銃殺少女でも倒しに行く?誘えば現れるんじゃない?あの子も中々のストーカーっぷりのようだし。
ヒイカ:わざわざ呼ぶのも面倒だわ。襲ってくれば今度こそ消すし、襲ってこなければ仕掛ける必要もない。
ヤズネ:じゃあ、あの剣使いの謎の女はどうするんでやす?あいつも付きまとってる感じでやすよ?
ヒイカ:あっちは何がしたいのかわからないわ。とりあえず攻撃してくる様子もないし、同じく仕掛ける必要もないわ。
ネクリア:じゃあほんとに何もすることがないのね。
ヒイカ:別になくていいのよ。むしろ、今は戦いたい気分じゃない。何も考えずに、何かが見つかるまで流れてみたい。と、思ってたのにこの有り様よ。
ネクリア:あはは…
ヒイカ:あははじゃない。まったく、手下の管理はちゃんとしなさいよね?
ネクリア:はぁい。
   ガシャン
   後ろの席で机が倒れた。
ラブル:何なんだお前!文句あるなら出て行けよ!
フバクノソラワ:別に文句を言ってるわけじゃないじゃ~ん!僕はただ、焼き肉とかの方がおいしいよね~って言っただけ!
ラブル:それをわざわざこの店で言うことが文句なんだよ!失礼だとか思わないのか!?
フバクノソラワ:うるさいな~っ!店の人に言われるならまだしも、君に言われる筋合いはないよっ!
ネクリア:こらあんたたち!止めなさい!
ラブル:ネクリア様からも言ってやってくださいよ!
ネクリア:とりあえず落ち着きなさい。
ハリイノギョ:すんまへんな、わいらじゃ抑えられへんかったんや。
ヒイカ:(ラブルとフバクノソラワ。ネクリアの手下の中で一番厄介なのはこの二人ね。)
ネクリア:まったく、あんたたちもうちょっと仲良くできないの?
ラブル:ネクリア様、こいつなんて必要ありませんよ!追放してください!
フバクノソラワ:こいつの方がいりませんよねっ?
ネクリア:あのね、私にとってはあなたたち二人とも大事な手下なの。どちらかを追放だなんてできないの。
ラブル:でもそれじゃ納得できません!
ソルト&シュガー:いっそのこと、勝負して決着つければ?
フバクノソラワ:それはいい考えだねっ!
ラブル:望むところだよ、誰がネクリア様の一番部下か教えてやる!
ネクリア:ちょ、ちょっと何言ってんのよ!?勝手なことは許さないわよ!
ヒイカ:(面倒な連中ね。)
ラブル:ジャング!お前たちも参加してもらうよ!
ジャング:はぁ?
ラブル:僕がネクリア様の側近になる!そのためには…ここの全員に僕の実力を認めさせる必要がある!いやむしろ!ジャングに決闘を申し込む!
フバクノソラワ:あはははは~!ばっかじゃないの~?君なんかがジャングに勝てるわけないじゃん!
ラブル:何ー!?
フバクノソラワ:ジャングは強いから側近してるんでしょ?最初に会ったから程度で側近やってるわけないじゃん!
ウミナギ:(あァ?フバクノソラワはジャングの事認めてんのかァ?)
ラブル:うるさいな!ジャング!勝負しろ!
ジャング:…いいだろう。ただし、負けたらもう口ごたえするなよ?
ラブル:こっちが勝ったら僕がネクリア様の側近だ。
ネクリア:あーもうジャングも何乗ってんのよ…
   かくして、ジャングVSラブルの決闘が始まった。
   外
ジャング:いいのか?ぼろ負けして恥をかくだけだぞ?
ラブル:ムカつくんだよ!ネクリア様は僕のものだ!
ジャング:(聞く耳持たず、か。)
ラブル:そんじゃあいくぞ!『ラブハートストーン!』
   ラブルはハート型の石を飛ばした。
ジャング:それがどうかしたか?
   ジャングは冷静に避けた。
ラブル:避けるな!
ジャング:避けるだろ。
ラブル:だったら…『ラブハートバタフライ!』
   カラフルな蝶が大量に襲いかかった。
ジャング:『ナイフ微塵斬り!』
   ジャングはナイフで連続で蝶たちを斬りつけた。
ジャング:他愛ない。
ラブル:この…っ!
ジャング:もうやめるか?今なら引き分けということにしてやってもいいぞ。
ラブル:誰が引き分けになんかするもんか!『ラブハートフェザー!』
   ラブルは羽をまき散らした。
ジャング:(攻撃じゃないな、身を隠すためか?)
ラブル:(今だ!)『ラブハートストーン!』
   まき散らされた羽の中からハート型の石が飛んできた。
ジャング:むっ!
   ジャングはかろうじて避けた。
ジャング:ラブル、それで隠れているつもりか?『ナイフ微塵投げ!』
   ジャングは羽の中全体にナイフを投げつけた。
ラブル:いたたたたっ!
ジャング:そこか!『ナイフ斬り!』
   ラブルの声がした場所を斬りつけ、舞った羽が吹き飛んだ。
ラブル:ぐっ!
ジャング:覚悟しろ。『ナイフ微塵斬り!』
   ザザザザザザザザザン
   ジャングはラブルを連続で斬りつけた。
ラブル:く…そうっ!
   ラブルは倒れた。
ジャング:これから先はその短気さをどうにかしろ。改善されればいつでもまた戦ってやる。
フバクノソラワ:あははははっ!かっこわる~い!
ラブル:なん…だと…?
ネクリア:ハイ、そこまで!これ以上争うのは許さないわ!
ヒイカ:終わったなら進むわよ。
ラブル:くそう…くそう…
ヒイカ:…はぁ。いつまでもうじうじ言ってんじゃないわよ。それ以上言ってると消すわよ。
ラブル:うるさい!お前なんか…
ネクリア:ラブル!!
ラブル:なんだよ、ネクリア様まで…お前らなんか…だいっきらいだぁぁぁ!!
   ラブルはどこかへ飛んで行ってしまった。
ネクリア:ラブル…
フバクノソラワ:あんな奴放っておきましょ~よ~。
ソルト&シュガー:ま、仕方ないよねー。あのままいられてもチーム内に険悪なムードが漂うだけだもんねー。
ネクリア:……
                        続く
 
2011年3月27日作成