ア:開花って…まさか向日葵を咲かせるだけの技か?はははははっ!くっだらねぇ技だなぁ!!
ジ:ネクリア様?あれは一体…
ネ:何って向日葵よ?
ジ:いやそうじゃなくって…どういった技なのですか?
ネ:どういったって、向日葵を咲かせる技よ?
ア:僕もなめられたものだ!水の怪物!その向日葵ごと沈めてしまえ!
水の怪物は向日葵を覆い尽くし、ネクリアたちに向かった。
ジ:ネクリア様!俺が…
ネ:やめなさいジャング。…もう勝負はついたわ。
ジ:え?
水の怪物はピタリと動きを止めていた。
ア:どうした?水の怪物!そいつらを溺れさせるんだ!動け!
アンプの呼びかけにも反応せず、じっとしていた。
ネ:さぁ、日輪草!解き放て!
水の怪物の足元が輝きだした。
ジ:あれは…向日葵!?
光っていたのは、ネクリアの出した向日葵だった。
ネ:向日葵は別名日輪草。太陽の花。太陽は自ら光輝く灼熱の光!
ピカーーーッ
向日葵は灼熱の光を周囲に放ち、水の怪物はあっという間に蒸発してしまった。
ネ:今回は力を抑えたからあんたまでは焼けないようにしてあげたわ。ありがたく思いなさい?
ア:くっ…
ジ:アンプ、もう俺達に関わるのは止めろ。さもなくば、このナイフがお前の心の臓を止めることになる。
ア:でも、僕は…僕はっ…!
ネ:アンプ。あんたさ、はっきり言ってすごいわ。
ア:え…!?
ネ:あんたの発明って最初は馬鹿にしてたんだけど、まさか日の力を使わないといけなくなるとは思わなかった。あんた、すごいよ。
ア:僕が…すごい?
ネ:ええ、すごいわ。
ア:(褒められた…僕の発明が…僕の成果が…)
《お前は我が家の恥だ。まともな成果も上げられない恥知らずめ!》
ア:(……どうせ…ただの同情だ。僕の発明なんて、誰の役にも立たないことくらいわかってる。でも、でも…僕はそれでも、認められたくて…)
ネ:自信持ちな。それがあんたの強さでしょう?
ア:お前…なんで、なんで僕にそんな言葉をかけるんだよ?敵だろ?僕は…お前達に攻撃したんだぞ?暴言だって…
ネ:別にそんなことはどうでもいいわよ。そんなこと言ったら、ジャングだって最初は攻撃してきたしね。
ア:なんなんだよお前ら…わけわかんない…どうせ同情だろ…僕なんか…どうせ…
ネ:どうせダメなんだ。とでも言いたいのかしら?そんなことを言ってるんならダメね。とことんダメな奴ね。生きてる価値もないわ。
ア:!!
ネ:今言ったでしょう?自信持てって。あんたは自分を信じてきたからそんな素晴らしい結果につながったんでしょう?
ア:素晴らしい結果?どこがだよ?
ネ:その力…もはや馬鹿には出来ないわ。正直に言う。あんた、強いよ。才能あるよ。
ア:えっ……(ずっと…言われたかった言葉があった。神と呼ばれた祖父、その息子の神の子と呼ばれた父…僕にも「才能がある」と…)
ポトッ
アンプの目から涙がこぼれた。
ア:(ずっと…聞きたかった言葉…)
《お前には才能がある。》
ア:(僕は…それだけが聞きたかった。今まで…ずっとずっと汚点だと言われてきた僕を誰も褒めてはくれなかった。やっとで…やっとで僕は褒められたんだ…)
ネ:そういえば、レジェンダリーフロンティアで読んだ本にあんたの事が書いてあってね、なんて書いてあったと思う?
ア:(僕の事?…きっと、ひどい事が…)
ネ:「生無き物に命を与える力を持つ、神の孫」。
ア:神の…孫…?
ネ:そっちもだけど、大事なのはその前。「生無き物に命を与える力」。それってさ、もしかしたらあんた…祖父を越える神になれるかもしれないってことじゃないの?
ア:え?どういうことだ?
ネ:この世に生きている生き物を生き物でなくするのは簡単。殺せばいい。でも、命無き物に命を吹き込むことは誰にも出来ない。でも、あんたはそれが出来る。すごいことじゃない?
ジ:たしかに、そういう言い方をすればすごいですね。
ネ:でしょ?だから、あんたは間違ってないよ。自分を信じて、これからもがんばりなさい。
ア:(あれ?なんだろう…何か…懐かしい記憶…)
《お前には才能がある。自分を信じて、これからもがんばりなさい。いいね?》
ア:(ああ、そうか…僕は元々、言われてたんだ。神である祖父に…。「才能がある」って…)
ネ:さぁて、私たちは行きましょうか。
ジ:え?こいつは放っておいていいのですか?
ネ:構わないわ。
ネクリアたちはゆっくり歩き出した。
ア:…ちょっと待て。
ネ:何?
ア:次会った時は…お前達をもっと驚かせてやる。
ネ:楽しみにしてるわよ。
ジ:実験段階でしたけど、うまくいきましたね。
ネ:ええ。そうね。
ネクリアはあくどい笑みを浮かべた。
ネ:「催眠術」、前から興味はあったのよね~。成功してよかったわ。
ジ:アンプの哀しみ、トラウマの感情を引き出して上手く操作し、それを反転させてアンプに希望を持たせる。無茶苦茶しますよ、ホント。
ネ:無茶苦茶だろうが出来ればいいのよ。でも、これでアンプはつきまとってこなくなったわ。
ジ:そうですね。
ネクリアたちはアンプに「催眠術」をかけていた。アンプの心の闇を操作し、「ネクリアの言葉が心に響くように」したのである。
中途半端な言葉でも構わない。ほんの少しアンプを喜ばせればいいのだ。
ネクリアは元々言葉巧みに言いくるめるのが得意だ。ほんの少し喜ばす程度簡単なのである。
実はネクリアはウミナギにも同じ手を使っていた。しかし、最初の実験だったためにあまりうまくはいかなかった。
でもウミナギの場合、催眠術自体はうまくいかなかったが、うまい具合にウミナギの心を動かせたのだった。
ネクリアとジャング。この二人は人の裏をかくのが得意なのである。
続く
2011年3月4日作成