ネ:……
ジ:……
ネクリアたちは林を歩いていた。が…
ネ:ねぇジャング。さっきから後ろから妙な視線を感じるのよね~。
ジ:俺も感じていますよ。
その視線の正体は…
ア:(あいつらは絶対に僕の研究の成果を見せつけてやるんだ!)
ネ:あれで尾行でもしてるつもりなのかしら?
ジ:丸見えですね。
ネ:そもそも林なんて隠れる場所もそうないのにねぇ。
ジ:ただの阿呆ですね。
ア:聞こえてんだよぉぉ!!
ネ:アラキコエテタノネー。イツノマニカオオゴエデシャベッテタワー。
ア:あからさますぎるだろ!!
ネ:で?なんで私たちをつけてんのよ?
ジ:ストーカーですね。
ネ:わぁ、変態。
ア:違う違う!偵察だ偵察!!
ネ:何を?
ア:お前達を。
ネ:どうして?
ア:今度こそ倒せるように。
ネ:何度やっても無理よ。以上。さぁ行くわよ。
ジ:はい。
ア:ってちょっとまてぇーい!然は問屋が卸さないぞ!
ネ:うるさい奴ね~。
ア:もう怒ったぞ!僕をここまで侮辱しやがってー!
ジ:別に侮辱はしてませんけどね。
ア:今度こそ後悔させてやるからな!覚悟しろ!
ネ:勝てないから偵察してたってことは、今は勝てないってことを自覚してるのよね?だったら挑んでも無駄だってこともわからないのかしら?
ジ:今こいつは竹屋の火事。何を言っても挑んできますよ。
アンプはいつも通り試験管を取り出した。そしてもう一つ、ペットボトルを取り出した。
ネ:今日はペットボトル怪物かしら?
ア:そんな安易なものではない!
アンプはペットボトルのふたをあけ、中に入っていた液体を地面に零した。そこに試験管の液体を注いだ。
ア:さぁ!あいつらを溺れさせろ!水の怪物!
液体はこれまたいつも通り変化し、ネクリアたちに襲いかかった。
ジ:水は斬れませんね。だとしたら…
ネ:相剋…よりも相生の方が効き目がありそうだから、『木の根操縦!』
地面から木の根が現れ、水の怪物を貫いた。
ネ:今回は早めに済みそうね。
ア:ふふふ…まだだよな!
水の怪物は体を貫かれても平気で進んできた。
ネ:あーそう、それじゃ効かないってことね。じゃあ相剋よ!『土の城壁!』
地面から土の壁が現れ、水の怪物の行く手を阻んだ。
ア:そんなものが通用するもんか!全部沈めてしまえ!
ばしゃぁぁ
水の怪物は土の壁に激突し、はじけたが、隙間を潜りぬけて再び水の怪物の形へとなった。
ネ:げげっ!面倒な奴ね!
ジ:(中々危険な相手…ならば…)
スッ
ジャングは懐の赤いナイフを手に持った。
ネ:待ちなさいジャング。
ジ:え?
ネクリアはそれを悟り、止めた。
ネ:きっとあいつは刻んでも今みたいに復活するわ。倒す術は、完全に消し去ることのみ。
ジ:完全に消し去る?…まさか、"禁忌"を使うつもりじゃないですよね?
ネ:いいえ、"禁忌"を使うまでもないわ。この陽の力ならね。
ジ:(陽の力…五行陰陽最後の力、「日」か…)
五行。それは中国等の古来思想で、万物を構成し、支配する5つの元素と呼ばれた。
木(もく)・火(か)・土(ど)・金(ごん)・水(すい)の総称である。
木火土金水の流れを相生といい、木は火を生成し、火は土を生成し、土は金を生成し、金は水を生成し、水は木を生成するというものである。
図に表すのならば円。この循環によって万物は成り立つとされる。
木土水火金の流れは相剋といい、木は土の上に立ち、土は水を吸い、水は火を消し、火は金を溶かし、金は木を斬るという打ち消しである。
図に表すのならば星。相生の円を星型に結ぶと出来上がるのが相剋である。
相生は和合、幸福。相剋は不和、災難。これによって相生は陰陽で表すと陽、相剋は陰となる。
現在の日本における「曜日」。それは日(太陽)と月と、火水木金土の五星からなる。
それを五行と照らし合わせると、陰が月、陽が日となる。
曜日と五行陰陽には関係性はあまりないが、まとめて表記される場合もある。
ネクリアの力は五行陰陽であり曜日の力でもある。つまり両方。
ネクリア自身は大して気にしていないからこそ「月」の力を多用するが、本来は「日」と「月」は他とは異なる力。
「日」だけは別格として見てはいる。だからこそここぞという時にしか使用しない。
というよりもネクリアは、「世界征服」を悪として見ているため、陽の力…つまり善、光である日を使うことを躊躇っている。
ジ:(俺も初めて見るな。日の力…)
ア:そんなハッタリが通用するものか!
ネ:まるで鬼の首を取ったようね。でも、あなたは今から肌に栗を生ずことになるわよ。
ア:何をわけのわからないことを…
ネ:だったらご覧なさい。『日輪草開花!』
・・・・・・
ア:なんだ?何をした?
ジ:(何も起こっていない?不発か?)
ネ:あんたたち、どこ見てるのかしら?そこよ、ほら。
ネクリアは水の怪物の足元を指差した。
ジ:え?…向日葵?
続く
2011年3月3日作成