15 熱が落ちる秋

   北の森

ウ:ちッ。また森かよォ…森ばっかじゃねェか。

ア2:それは仕方ないだろ。町と町の間は森と相場が決まっている。

ウ:どこの相場だそれは。

ノ:アルトア。何かこの森…変。

   この生物はノット。3匹の1匹で、雲のような姿をしている一つ目生物。

ア2:変?何がだ?

ウ:あァ?…これは、瘴気か?

ペ:ヒィー!ネツビョウニナッチャウー!

ア2:俺達は憑き物だからならないっての。

ウ:俺も犬神だからな、元々憑き物だから熱病なんか怖くもねェけどな。(だが、少しこの正体を調べる必要があるな。)

ノ:ウミナギ、調べる?

ウ:あァ。この瘴気の正体、暴くぞ。どんなものが虹の子に繋がるかわからねェからなァァ…

   ヒュン ズドッ

ウ:いでっ!

   急激にどこかから矢が飛んできて、ウミナギの右肩に刺さった。

ウ:あ゙ぁ゙!?なんだァァ?

  ウミナギは矢を抜き、矢が飛んできた方角を見た。

ウ:アルトアァァ…何か感じるかァァ?

ア2:いや、特に気配は感じない…とりあえず人間ではないみたいだ。

ウ:別の生物がいるのかァ?

ア2:森だからな、生物なら大量にいる。

ウ:ちッ。特定はできねェか。だったら…ペライト!

ペ:ヨシ、マカセロ!

   ペライトは先端の鋏で近くの草木を切り刻んでいった。

ウ:(さァどこだ?姿を現しやがれ…そこで俺が喰ってやるよォォォ……)

   ガサッ

   ペライトが鋏を近づけた草木の間から音がした。

ウ:そこかァァ!『犬戻り道!』

   音のした草木の周辺にトゲトゲの針の山が現れた。

ウ:逃がさねェェぞォォォ…姿見せやがれェェェェ!!

   ウミナギは草木を掻き分けた。

ウ:…あァァ!?

?:くぅ~ん。

   そこにいたのは、子犬だった。

ウ:なんで…子犬が…?

ア2:どうした?ウミナギ?

ウ:いねェ…矢を射てきた奴がいねェ!

ア2:たしかに…ここにいるのは「1匹の子猫だけ」だ!

ウ:…あ?お前今、何つった?

ア2:え?だから、1匹の子猫だけ…

ウ:どこ見てんだァァ?どう見ても子犬じゃあねェかァァ!

ア2:え!?

ノ:…子狐?

ウ:(なんだ…?全員見えているものが違う?だが、どうして?)

?:《お前達はもう…逃げられないよ》

ウ:!?(どこから声がしてんだ!?)おい、気をつけろ!

   し~ん…

ウ:どうした?返事しろ!…あァ?

   そこには、アルトアたちの姿はなかった。

ウ:アルトアァァ?ペライト?ノット?どこいきやがったんだァァ?

   周囲を探しても、姿は見えなかった。それどころか、先ほどの子犬すら消えていた。

ウ:どうなってやがる?何が起こってんだ?

?:だから言っただろう?お前達はもう逃げられないんだって。

   ウミナギの前に、黒い霧が現れた。

ウ:なんだァァ?(瘴気の正体はコイツか。)

ヨドリ(以下ヨ):僕はヨドリ。鵺だ。

ウ:鵺ェ?

ヨ:知らないのか?無知め。

ウ:知るわけねェだろォ?妖怪の一種か?

ヨ:「鵺」。それは正体不明の物体を差す。妖怪の意ではなく、何かわからないものだ。

ウ:だからなんだってんだァァ?てめぇ、アルトアたちをどこにやりやがったァァ?

ヨ:どこにもやってない。ただ、君が認識できないだけ。

ウ:あァ?

ヨ:鵺の能力さ。「在るのに見えない」、「ないのに見える」。

ウ:つまり、アルトアたちはここにいるってことだなァァ?

ヨ:そうだよ。

ウ:だったら話ははえェ。てめぇを倒せば見えるってことだろォォ?

ヨ:出来るのかな?見ての通り僕は霧。霧を攻撃することなんて…出来ないだろう?

ウ:出来るぜェェ…『エバポレイトポイズン!』

ヨ:(なんだ?)

   ウミナギの周囲から、桃色の霧が現れた。

ヨ:!?

   ヨドリはふらついた。

ヨ:なんだ?これは…?

ウ:名前通りだぜェェ…エバポレイトポイズン(気化した毒)。

ヨ:ぐっ…

ウ:答えな。てめぇはどうして俺を襲った?

ヨ:…ここまでか。

   スゥッ

   瘴気が消え、空気が軽くなった。

ア2:ウミナギ!!

   黒い霧が消えると、アルトアたちが現れた。

ペ:ダイジョウブカ?キュウニキエタカラビックリシタゾ!

ウ:あァ…ちょっくら戦闘してたんだよ。

ノ:戦闘?誰と?

ウ:ヨドリっつー奴だ。鵺とか言ってやがったなァァ。

ア2:鵺…正体不明か…

ノ:瘴気、消えてる…

ペ:ホントダ!

ア2:そいつが瘴気の正体だったんだな。残念だな、虹の子じゃなくて…

ウ:そうそう簡単に見つかるとは思ってねェよ。でも、あの鵺…また会いそうな気がするぜェェ…

ア2:そうだな…

   ウミナギたちは更に北を目指して歩き始めた。

 

   東の町

ネ:ふぅ。やっぱりコーヒーは砂糖控えめよね。

   ネクリアたちはカフェでゆっくりくつろいでいた。

ジ:いいのか?きっとミョンガーたちは必死に虹の子を探してるぞ?

ネ:いいのよ。あいつらは手下なんだから少しくらい使わなきゃ。というか、今まで主従関係がなさすぎたのよ。

ジ:まぁ、誰一人敬語を使わないからな。

ネ:ほんとよ。絶対手下だってこと忘れてるわ。

ジ:ははっ。じゃあ俺が使ってやろうか?

ネ:あら嬉しい。どうせならネクリア様~とでも言って欲しいわね。

ジ:ぶっ!

ネ:何ふいてんのよ。

ジ:いや…ネクリア様ねぇ…

ネ:呼んでくれるのかしら?

ジ:側近になったらな。

ネ:あら?まだ側近じゃなかったの?参謀役は任せたはずよ?

ジ:参謀と側近は違うだろ。でも…どうしてもって言うなら……なってやってもいいぞ?

ネ:あんた…ふっきれた?

ジ:いや…リッパー様の事は未だに引きずっているといえばもちろんそうだ。でも、このままじゃ何も変わらない。だったら…

ネ:私を同じ様に呼んで、ふっきりたい…と?

ジ:…

   ジャングはゆっくり頷いた。

ネ:そんじゃ、お試し期間としましょうか。ちょうどミョンガーたちもいないことだし。

ジ:…そうだな。

ネ:さぁて、それじゃあそろそろ出発しましょうか!

   ジャングは軽く微笑んで答えた。

ジ:はい、ネクリア様。

 

 

                           続く

 

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2011‎年‎3‎月‎2‎日作成