13 雪が咲いた春

ネ:それもまた物騒な本ねぇ。

ウ:ああ。だが、俺はこの「周囲の色を奪う」ってのが妙に気になってよ。

ネ:そうね。どういうことなのかしら?

ウ:それは読んでみねぇとわかんねェけどな。

ネ:ふぅん。じゃあ、読み終わったらその本私に貸してちょうだいな。

ウ:おゥ。

   ウミナギは椅子に座り、本を読み始めた。

ネ:さて、私は何を読もうかしらね~?

   ネクリアは考えるのも面倒だと思い、てきとーに本をとった。

ネ:えっとー…「天才科学者とその末裔」。また微妙な本とっちゃったわね~。

   本の内容は、科学者が発明した作品が世間に認められ、その一族は医療の神とも呼ばれた。というものだった。

ネ:(あんま興味ないわねー。そういえば、神がどうとかって最近聞いた気が…)

   「ドープ家とは、代々医療界のトップを突き進み、僕の祖父は医療の神とも呼ばれたのだ!」

ネ:(ああ、あいつね。なんか絡んできた結局奢ってくれなかった奴。ドープ家とか言ってたわね。まさかだけど、この本ってドープ家のものじゃないわよね?)

   ネクリアは本をぱらぱらと飛ばして読み、名前を見つけた。

ネ:「ドープ家の末裔、アンプ・ドープ」…え?

   ネクリアが驚いたのは、ドープ家だったからではなかった。

ネ:(どうして…アンプの名前までこの書物に載っているの!?一体いつ記された本なの!?アンプはまだ若かったはず…何なのこの本!?)

ウ:どういうことだ…?

ネ:どうしたの?

ウ:なんで…こんな最近の事が載ってんだよ!?

ネ:(ウミナギの方も?ということは、この本がおかしいんじゃない!この資料館にある書物全て!)

ハ:どないしたんや?血相変えて…

   一段落読み終えたハリイノギョがネクリアたちの異変に気付いた。

ネ:この資料館…変よ。

ハ:変?何がや?

ネ:つい最近起こった出来事まで載ってるのよ。

ハ:それのどこが変なんや?

ジ:変だろう。ここの書物は伝説。伝説とは遥か昔の話のはずで、今現在生きている人物や状況が載っているはずがないんだ。

   ジャングは先ほどの本を片手に会話に参加してきた。

ネ:そっちの本も?

ジ:ああ、しっかりとアルトアたちまで書いてあった。ウミナギ、お前もだ。

ウ:俺も…?

   キィッ

   突然資料館の扉が開いた。

老人:異変に気がついたみたいじゃのぅ。

ネ:これは…どういうこと?

老人:幻と伝説は紙一重。存在するかどうかわからない。

ネ:何が言いたいのかしら?

老人:所詮は幻…決して訪れることのできない土地。しかし、必ず訪れる土地。それはどーこだ?

ミ:訪れることのできないけど訪れる土地?どういうこと~?

ジ:黄泉の世界…とでも言いたいのか?

老人:そう…天や地からこの世は見えている。そこで起こった事は全て記される。見えぬ者が書いている。

ハ:いまいち意味がわからん。

ジ:伝説の土地は、幻の土地ってことか。じゃあ、俺達はどうなる?

老人:どうもならん。この土地を出ればまたこの世じゃ。12時間以内に出られればの話じゃがな…

ネ:12時間?

   ネクリアは資料館にかかっている時計を見た。

ネ:時計の針が…

   時計の針は、とんでもないほどのスピードで回っていた。

老人:ここはあの世とこの世の境界。あの世は時間にも空間にも妨げられない世界。その境界の時間と空間は…乱れる。

ネ:(まずい!)皆!急いで出るわよ!

ミ:ん?ん?どういうこと~?

ウ:つまりこのままだと、俺ら全員死んだことになるってことだろ!

ハ:な、なんやて~!!??

   ネクリアたちは資料館を飛びだして、洞穴に向かった。

ネ:まだ間に合う!

   しかし、洞穴の入口はどんどん小さくなっていった。

ハ:あかんて!もうダメやー!

ジ:諦めるのはまだ早い!

   ジャングは素早く動いて先に洞穴の入口にたどり着き、懐から赤いナイフを取り出した。

ジ:はぁぁぁぁぁぁー!!『ナイフ奥義・鋭利切断斬!!』

   ジャングは赤いナイフで入口を斬り刻んだ。

   ガラガラガラ

   ジャングのナイフで刻まれた洞穴の入口は崩れ去り、強引に入口を広げた。

ネ:ナイス!

   ネクリアたちは洞穴に入り、全力で走って洞穴を抜けた。

ネ:わわっ!

   ドッポーン

   洞穴の出口は滝の裏だったため、全員落ちた。

ハ:おっと!わいの出番やな!

   ハリイノギョはすいすいと泳いでネクリアたちを陸へとあげた。

ミ:ふぅ~っ。なんとか脱出できたね~。

ジ:しかし、まさかレジェンダリーフロンティアがあの世だったとはな。

ネ:誰もたどり着けないはずだわ。たどり着いて伝説の書物の虜になってたら、時間が過ぎて帰れなくなるもの。

ハ:にしても惜しかったな~。どうせなら書物を1,2冊貰えばよかったわ~。

ジ:資料室を出た時は持ってたんだけどな…奥義を使う時に落としてしまったようだ。ネクリアは持ってきてないか?

ネ:それどころじゃなかったわよ。

ミ:僕も~。

ウ:へへッ。お前ら爪が甘いなァ…

ネ:え?まさかあんた…

ウ:ほれ。

   ウミナギは本を見せた。

ネ:あーっ!あんたこれ…

ウ:俺が読んでた本だけどよ、どうせだから持ってきてやったぜェ。

ネ:よくやったわウミナギ!!あの世から本を持って帰ってきた奴なんてあんたが初めてよきっと!

ジ:でかした!で、なんの本だ?

ウ:「周囲の色を奪う最強で最凶の能力、虹の力」って本だ。

ネ:ま、この際なんでもいいわ。そういえばあんたも変に感じたってことは、この本に関係する人物が今存在してるってことよね?

ウ:らしいな。

ネ:どんな内容だった?

ウ:えっとな…

   ウミナギは腰をかけ、本の内容を語り始めた。

 

                               続く

 

戻る

2011‎年‎3‎月‎2‎日作成