12 空が茂る黄緑

   森の奥の奥、そのまた奥の樹海の更に奥の辺境の地。レジェンダリーフロンティアはそこにある。

ネ:迷った。

   ここは森。ウミナギを仲間にした町を出た場所で、ネクリアたちは迷っていた。

ジ:まるで同じ場所を歩いてるみたいだな。

ハ:水陸生物のわいとしてはそろそろ水の一滴でも欲しいもんやな…

ネ:あんたじゃなくても水は欲しくなるわよ。ミョンガー、水の音とか聞こえない?

ミ:ん~…

   ミョンガーは耳を立てて周囲の音を聞いた。

ネ:どう?

ミ:わずかだけど…川の音が聞こえる。結構遠いけど~。

ネ:よし、まずはその川を目指していきましょう。これからの事はそこで考えましょう!

ジ:(あ、そういえばさっきも川あったな。あの川の上流か?)

   しばらく歩いて

ネ:お、中々大き目の川ね。

ハ:ひゃっほー!水や水やー!

   ハリイノギョは嬉しそうに川に飛び込んだ。

   ネクリアたちも辺で休んだ。

ウ:…

ジ:どうした?川の中を見つめて…

ウ:魚がいる。

ジ:獲れるのか?

ウ:楽勝だ。

   バシャッ

   ウミナギは素早く手を川に突っ込み、魚を掴み獲った。

ネ:あら、やるじゃないの。

ウ:へッ。

   ウミナギは獲った魚をそのまま丸飲みで食べた。

?:こりゃ!お前さん!何しとるんじゃ!

ウ:あァ?

   川上から一人の老人が歩いてきた。

老人:お前さん、そこの川の魚を食ったな?

ウ:だからなんだってんだァ?

老人:恐ろしい事を!祟りじゃ!祟りを受けるぞ!

ウ:あァ?祟りだァ?へッ、くだらねェ…犬神は元々災厄を齎す憑き物。むしろ祟りを与える側だ。

老人:犬神…じゃと?

ジ:なんだ?犬神を知ってるのか?

老人:おお、知っとるとも。人を恨むことを力をする妖怪じゃろ?

ジ:(「犬神憑き」だけじゃなく、「犬神」の事も知ってるのか…)

ネ:あなた、何者?まるで何でも知ってそうな口ぶりね。

老人:わしがすごいわけじゃない。レジェンダリーフロンティアの伝説がすごいのじゃ。

ミ:連打するリーが風呂に入ってティアラ?

ハ:霊殿の風呂が帝王?

ウ:お前らの耳どうなってんだよ。

ジ:レジェンダリーフロンティア?数々の伝説が残された書物が眠るとされる伝説の土地…?

ネ:伝説が残された書物があるのが伝説の土地ってなんか不思議ね。

老人:知っておったか。ならばわざわざ語る必要もなかろう。

ジ:この近くにあるのか?レジェンダリーフロンティアが!

老人:興味ありそうじゃのぅ。

ジ:当然だ。伝承や伝説、それは嘘か真かわからない物が多い。しかし、レジェンダリーフロンティアの書物に記された伝説は全て真だと聞く。

老人:ほぅ。書物を見たいのか?

ジ:伝承は知っていて損はしない。もしそれが俺達の役に立つものなら尚更だ。

老人:ほっほっほっ。よかろう、ついて参れ。

   ネクリアたちは老人について行った。

   老人は森の奥の奥に進み、滝の裏の洞穴を潜り、たどり着いた。

老人:ここが、レジェンダリーフロンティアじゃよ。

   そこは、外壁が岩山で覆われ、上空は霧で全く太陽の光が見えない…まるで隔離されたかのような空間だった。

ジ:(レジェンダリーフロンティアは上空からでも探せないと聞いてはいたが、この不可思議な霧の所為か。)

ネ:で、どんな伝説があるのよ?

老人:伝説は色々あるぞ?ほれ、あそこの資料館。あそこには、ありとあらゆる伝説の書物がある。

ジ:…

   ジャングはそわそわしている。

ネ:見てきていいわよ。

ジ:あ、ああ。

   ジャングは早足で資料館に入って行った。

ネ:ところで、こんなに簡単に余所者を入れてよかったのかしら?

老人:ええのじゃよ。伝説の書物も、読まれなければそれは伝説ではなく幻。あるけどない、存在なき物じゃ。

ミ:伝説ってどんなのがあるの~?

老人:色々あるぞ?例えば…天を駆ける怪奇の龍、天性の才能を持った狂気の魔術師、生き物を狂わせる五大狂能力…

ハ:物騒なのばっかやな。

老人:そんなものじゃ。じゃが、まともなのを言うなら…星の花から生まれた正義の戦士、ハートマークは彼女のシンボル、とかのぅ。

ネ:ふぅーん。

老人:お前さんらも見るといい。わしはあの家に住んどるから、何かあったらくるとよい。

ネ:ええ、わかったわ。

   老人は軽く微笑み、家に帰った。

   ネクリアたちは資料館に入り、それぞれ書物を手にとって見始めた。

ネ:ほんと、色々なものがあるわね~。願いを叶える大彗星、世界を滅ぼす核の力、災厄と厄除けの神、世の理のズレを修正する者…

ジ:ほぅほぅ…

   ジャングは真剣に書物を読んでいた。

ネ:何読んでるの?

ジ:憑き物についてだ。ウミナギの祖先もそうだし、ウミナギに憑いてたアルトアたちのこともだしな。

ネ:へぇ~。ほんと、色んなのがあるのね。

ハ:あははははっ!

   ハリイノギョが書物を読みながら大笑いしていた。

ネ:あんたは何を見て笑ってんの?

ハ:笑いの神と髪って本や!おもろいで~!

ネ:それは書物と呼べるのかしら?

ミ:へぇ~。

ネ:ミョンガーは何を読んでるの?

ミ:大洪水で沈んだ国の神話だよ~。

ネ:よくありそうな伝承ね。

ウ:でも、ここにある伝説は全部本物なんだろ?

ネ:そうみたいね。って、あんたは何も読んでないの?

ウ:俺はこれを読もうとしてたところだ。

   ウミナギは持っていた本をネクリアに見せた。

ネ:{その本の存在は、この先の私の人生を大きく変えたと言っても過言ではなかった。}

 

 

ネ:何々…「周囲の色を奪う最強で最凶の能力、虹の力」…

 

 

                                続く

 

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2011‎年‎3‎月‎1‎日作成