森の奥に流れる川
ジ:…
その辺の岩に腰をかけ、静かに流れる川を見つめるジャング。
ウ:おゥ。やっと見つけたぜェ。
ウミナギはジャングを追ってきていた。
ジ:…何だ?一人にしてくれって言ったはずだ。
ウ:お前らの関係ってさ、なんつか…不思議なんだよなァ。
ジ:お前ら?誰とのことだ?
ウ:ネクリアだ。仲間っていうには…ちょっと奇妙だ。
ジ:どう奇妙なんだ?
ウ:細かくはわかんねェよ。でも、仲間じゃないみたいだ。どちらかと言うと…敵対してる。
ジ:…敵対…か。
ウ:ま、俺の勘違いかもしれねェけどな。
ジ:…いや、あながち間違いではない。
ウ:あァ?そうなのかァ?
ジ:俺は…ネクリアを信頼していないのかもしれない。
回想~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ネクリアは城を離れ、カフェで優雅にコーヒーを飲んでいた。
ネ:(特に何もないし、そろそろこの国から出ようかしらね~。)
ドガーーーン
ネ:え?
突然爆発音と地響きが襲った。
ネ:(今の音…城!?)
ネクリアが城を見ると、城の上部から黒煙が上がっていた。
住人:おいおい…王女は大丈夫なのか!?
ネ:(たしかに…あれは危なそうね。ちょっと行ってみようかしら。)
ネクリアは城の中へと入り、再び王女の部屋へ向かった。
ネ:(え!?)
爆発は王女の部屋で起こっており、扉も粉々になっていた。
ネ:これは…どうなってるの!?
ジ:リッパー様!リッパー様ぁぁぁ!!
部屋の中で、傷だらけのジャングが血塗れの王女を抱きかかえていた。。
ネ:あんた…何があったの!?
ジ:お前…さっきの…
ネ:早く手当てしないと!
ネクリアが王女に触ろうとすると
ジ:触るなぁぁぁぁ!!!
バシッ
ジャングはネクリアの手を払った。
ネ:何するのよ!
ジ:リッパー様に触れていいのは俺だけだ…誰も触れさせない…リッパー様は俺だけのものだ…
ネ:そんなこと言ってる場合じゃないでしょ!?早く手当てしないと…手遅れになるのよ!?
ジ:触れさせない…俺だけのものだ…誰にも…
ネ:あーもう!どきな!
ドンッ
ネクリアはジャングを突き飛ばした。
ネ:(これはひどい出血…早く医者に見せないと本当にやばいわね…)あんた、医者連れてきなさい!
ネクリアが呼びかけても、ジャングは反応しなかった。
ネ:ちょっとあんた!聞いてんの!?
ジ:俺のリッパー様に…手を出すなぁぁぁぁ!!
ジャングはネクリアに斬りかかった。
ネ:ぃたっ!あんたねぇ!だからそんなことを言ってる場合じゃ…
ジ:俺の…リッパー様…俺の…
ネ:(まともに話せる状態じゃなさそうね…)悪いけど…『月の光線!』
ビィィィーン
ネクリアの放った光線は一直線にジャングに伸びていった。
ネ:(これで眠ってて…)
スッ
ジャングは前かがみになって光線を回避し、そのまま突っ込んできた。
ネ:ちょっ!?
ジ:リッパー様に…手を触れるなぁぁ!!『ナイフ微塵斬り!』
ジャングは連続で斬りかかってきた。
ネ:『土の城壁!』
ネクリアは土の壁を作り、ジャングのナイフを防いだ。
ジ:この壁…邪魔なんだよぉぉぉぉ!!
ジャングは力を増し、壁を砕いた。
ネ:(まずい!…斬られる!)
ジャングは裏手にナイフを持ち、手を大きく上にあげた。
ジ:その手を離せぇぇぇ!!
ネ:(くっ!)
ネクリアは目を瞑った。
ザクッ
ネ:痛……くない?
ネクリアがゆっくり目を開くと、王女がネクリアを覆うように盾になっていた。
ジ:リッパー…さま…?
ジャングのナイフは王女の背に刺さっていた。
王女:おやめなさ…い…
ジ:あ…あぁ…
かしゃん
王女に刺さったナイフは地面に落ちた。
王女:怪我は…ない?
ネ:え?ええ…それより、早く医者に…
王女:いいわ…
ネ:でも!
王女:ジャン…グ…
ジ:リッパー様!!
ジャングは王女を支えた。
ジ:申し訳ありません…リッパー様…
王女:あなたが…責を負う必要はありません…これは…運命…
ネ:ねぇ、何があったの?一体誰が…
王女:わかりません…でも、私の行いをよく思わない者も…いたのでしょう…
ジ:そんなことありません!リッパー様のすることに間違いなど…
王女:私もそう信じてここまで来ました。でも…
ネ:…犯人を探すわ。探して見せる。
王女:その必要はありません…
ネ:でも、このままじゃ…
王女:言ったでしょう…これは運命…定められた道。変えることはできない…
ネ:運命なんて自分で切り開くものよ!定められてる道なんかじゃない!
王女:ふふ…最後に…あなたのような人に出会えて…よかった…
ジ:リッパー様…リッパー様ぁぁぁ…
王女:ジャング…今まで、ありがとう…あなたもまた新しい人に仕えて…そう、たとえば…この人のような、素敵な…人に…
王女は、そこで息絶えた。
ジ:リッパー様ぁぁぁぁぁぁ!!!
それから数日後
町はずれの倉庫
人:ま、待ってくれ!殺さないで…
ネ:殺さないで?よくそんなことが言えたわね。
ジ:リッパー様を死に陥れたお前は…ここで果てろ。
人:ひ…
ネクリアとジャングは爆発を起こした犯人を探し出し、跡形もなく消し去った。
倉庫の外
ネ:あんた、この先どうするの?
ジ:…わからない。リッパー様を失った俺には、何も残っていない。
ネ:そう…。だったら、あんたさ…私と一緒に来ない?
ジ:…何?
ネ:何も残ってないなら、私と何か残るものを創りましょう?
ジ:お前とだと…?断る。俺はリッパー様にしか仕えない。
ネ:別に仕える必要はないわ。仲間になりましょう?私ね、あんたのこと、気に入ったのよ。
ジ:仲間…?
ネ:ええ、あなたも一緒に来てくれると思うんだけど?世界征服の旅。
ジ:世界征服?くだらないな。そんなもの出来るはずがない。
ネ:出来るはずがない。でも、誰かがやらなきゃいけないのよ。この世から…犯罪者を消すの。
ジ:犯罪者を…消す…
ネ:あんたも悔しいでしょ?あんな奴らの所為で…王女のような素敵な命が失われていくの。私は、それを黙って見ていられない。あんたは?
ジ:……俺もだ。犯罪者どもが蔓延るこの世界を…変えたい。
ネ:それなら決まりよ。…一緒に来なさい、ジャング!
ジ:…一つだけ覚えておけ。
ネ:何よ?
ジ:俺は、決してリッパー様以外の奴に忠誠は誓わない。
ネ:構わないわ。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ハ:なるほどな~。せやからジャングはんは手下になるんを嫌がったんやな。
ネ:すっかり忘れてたわ。悪い事言ったわね…
ガサッ
ジャングとウミナギが帰ってきた。
ネ:あら、おかえり。
ジ:ああ。
その場はしばらく沈黙だった。
ジ:ネクリア。
その沈黙を破ったのは、ジャングだった。
ネ:ん、ん?
ジ:いつか…お前をもっと信頼して、この身を完全に任せられるようになったら……側近にくらいはなってやるよ。
ネ:ジャング……。わかったわ。待ってるわよ。
ジ:…そろそろ出発するか。
ネ:そうね。
ネクリアたちは、静かに歩きだした。
続く
2011年2月28日作成