10 陸が深い瑠璃

ネ:四天王って響きよくない?

ジ:はぁ?

   前の町を出て森に来た所で、ネクリアは唐突にそんな事を言いだした。

ミ:四天王って何~?

ハ:あれやろ?4人の天の使い。

ウ:あァ?4人の王様じゃねェのか?

ジ:四天王ってのは、四方を守る守護神。上の者を守る4人って意味で捉えていいな。

ハ:なんや。せやったら、丁度4人おるやん。わいと…

ミ:僕と~…

ウ:俺と…

ジ:…え?俺!?

ネ:あら!四天王完成ね!

ジ:ちょっとまて!俺はネクリアの手下じゃないぞ!?

ウ:あァ?そうなのか?

ミ:てっきり手下なのかと思ったよ~。

ジ:違う!俺は仲間なだけで手下じゃない。

ネ:いいじゃない、この際手下で。

ジ:よくない。

ウ:そこまで拒絶する必要あんのかァ?

ミ:別にネクリアって命令口調じゃないし、対して今までと変わらないと思うよ~?

ジ:それはわかっている。ネクリアの事はお前達より知ってる。だがそれだけは出来ない。

ハ:なんや?ええやん、手下になったりーや。

ジ:手下になるくらいなら…俺はここで別れさせてもらう。

   空気が急に重くなった。

ハ:あんさん…そこまで言わんでもええんやないか?冗談キツイわ~。

ジ:…

   ジャングはその場を離れようとした。

ミ:どこ行くの~?

ジ:少し一人にさせてくれ。

   ジャングは森の奥へ歩いて行った。

ネ:さて…と。じゃあここで休憩でもしましょうか。

ハ:追わんでええんか?

ネ:すっかり忘れてたわ。あいつの事…

ハ:あいつって?

   ネクリアは座って語り出した。

ネ:ジャングは、私が半分強引に連れだしたのよ。

回想~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

   とある国

ネ:ここはどんな国かしら?

   その国は砂の国で、王女が仕切る国だった。仕切ると言っても支配しているわけではなく、いい国だった。

ネ:王女…ね、一度会ってみたいわね~。

   ネクリアは城に忍び込もうと思い、力を蓄えつつ城に向かった。が…

ネ:え?自由に入れるの?

門番:はい。この城はどなたでも自由に入れますよ。もちろん旅人も例外ではありません。

ネ:あらそう?じゃあ王女に会ったりも出来るのかしら?

門番:それは出来ません。王女の部屋に入るには、側近であるジャング様の許可が必要です。

ネ:側近ねぇ…

   ネクリアはとりあえず城に入った。しかし、王女に会うために側近の許可が必要だが、理由もないのに合わせてくれるはずもない。

ネ:じゃあ…方法は一つよね。

   その方法とは、やはり忍び込むことだった。ネクリアは監視の目を潜り、王女の部屋に近づいた。

ネ:(この部屋ね。どうやら側近もいないみたいだし…突入よー!)

   ネクリアは扉に近づいた。

ネ:!?

   ネクリアは気配を感じてとっさに止まった。すると、目の前の地面にナイフが数本刺さった。

ネ:(あっぶな~…このまま近づいてたら血塗れね。と、それより…)誰かしら?

ジ:誰か?それを聞くのはこっちだ。

   どこからともなくジャングが現れた。

ジ:この部屋は王女の部屋。それを知っての行動か?

ネ:あら、そうだったの?迷っちゃいました~…なーんてことは…

ジ:そんな嘘は通用しない。ここまでの警備は厳重だ。その監視を潜りぬけてきたのなら…わざわざ来たとしか思えないな。

   ジャングはナイフを構えた。

ジ:答えろ。王女に何の用だ。答えぬのならこのナイフがお前の身体を貫く。

ネ:あらあら、物騒じゃないの。あいにく私は特に用はないのよね~。ただ、ちょっと興味があったから寄っただけよ。

ジ:そんな嘘…

ネ:嘘じゃないわよ。命かけてまで会いたいとは思わないし、ここで引き返すわ。

ジ:…

   ジャングは疑いの目でネクリアを見つめた。

ネ:信用してくれてないみたいね。

ジ:当然だ。

   ギィッ

   その時、王女の部屋の扉が開いた。

王女:ジャング。おやめなさい。

ジ:リッパー様…

ネ:あなたが王女ね。お会いできて嬉しいわ~。

王女:ようこそ。どうぞ、入って。

ジ:リッパー様!?何を…

王女:大丈夫よ。この人の目は信用できるわ。それより、紅茶でもご用意して。

ジ:…畏まりました。

   ジャングは静かに下がった。

王女:どうぞ。

   ネクリアは部屋に入り、椅子に座った。

ネ:こんな見ず知らずの者を入れてもいいの?もしかしたら刺客かもしれないわよ?

王女:それはないわ。あなたの目を見る限りね。

ネ:目?さっきから目ばかり…何か目にあるの?

王女:ええ。私は目を見るだけでその人のことがわかるの。どんな人なのか…ね。

ネ:あら?でも私の目を見る前にあなたは出てきたわ。それはどういうことかしら?

王女:あなたが入ってきた扉を御覧なさい。

   ネクリアは、入ってきた扉を見た。

ネ:え?扉は…どこ?

   そこには、廊下しか見えなかった。

王女:驚いてくれた?この扉はマジックミラーのように、片側からは反対が見えるのよ。

ネ:なるほどね…それで私の目を見たのね。

王女:そういうこと。それで?どういう御用件かしら?まさか本当に何もないのかしら?

ネ:ええ。何もないわ。さっきこの国についたばかり。この国は穏やかでいい国だから、どんな人が仕切ってるのか見てみたかったのよ。

王女:そうだったの。だったら満足いただけたかしら?

ネ:そうね。もう十分だわ。

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ハ:なんや?そのまま帰ってしもたんか?特に何事もないやん。ジャングはんと敵対しまくりやん。

ネ:ええ、その時はね。

ミ:ねぇねぇ…ウミナギは~?

ハ:ウミナギはんならそこに…っておらんな。

ネ:そのうち帰ってくるでしょ。

ハ:せやな。それより続きや!

ネ:はいはい。

 


                               続く

 

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2011‎年‎2‎月‎28‎日作成