09 陽が隠れる闇

ウ:ふざけんなァァ!誰が人間の手下になんざなるかよォォォ!お前ら人間なんかなァァ俺が全員喰ってやるんだよォォォ!!

ネ:ええ。だから…あんたが喰えばいい。

ウ:あ゙ぁ゙?

ネ:私たちは世界を征服する。犯罪者どもを消し去るの。あんたは憎めば憎むほど力を増す。でも、決して「いい人間」を憎むことはできない。

ミ:いい人間?

ネ:さっきの女の子のようにね。どこまでがウミナギの許す範囲かわからないけど、ウミナギの判断で「いい人間」は決して恨めないのよ。

ウ:そ、そんなことはねェェ!俺は…人間が憎い!恨めしい!お前ら人間全員憎いんだ!

ネ:聞きなさい、ウミナギ。私は…あんたが欲しい。悪い奴を決して許さない、そいつらを憎めば憎むほど力を増す。これ以上ないほど適した能力だわ。

ウ:勝手に話を進めてんじゃねェェェ!手下になんかなんねぇって言ってんだろォォ!

ネ:だったら…

   ネクリアはウミナギを抱き寄せた。

ウ:あ゙ぁ゙っ!?てめ、何しやがんだァァ!?

ネ:私が…あんたの親になってあげる。わかってるんでしょ?あんただって…

ウ:うるせェェ!

ネ:もう強がらなくていい。いい人間まで憎もうとしなくていい。頭ではわかってるはずよ。憎む力が弱まれば、本当に憎い奴を喰う力がなくなってしまう。だから、人間全てを憎もうとしてるのよね?

ウ:違う!俺は…本当にお前ら人間が…

ネ:甘えなさい。私があんたの親になってあげるから…ね?ナギ…

ウ:うるせェ…人間がァァ…憎い…憎いんだよォォォォ!!

   ウミナギはネクリアを振り払った。

ジ:こいつ!

ネ:攻撃するんじゃないわ!

ジ:でも…

ウ:人間めがァァァ…喰ってやるよォォォォ!『イートピーポー!』

ミ:またあれだ!危ないよ~!!

   しかし、ウミナギの手は顔に変形しなかった。

ウ:あぁ…?なんでだよ…?どうした!飛べよォォ!!あの憎たらしい人間を…喰えよォォォ…

   ウミナギはその場に膝をついた。

ウ:なんでだよ…どうしてだよ…憎いのに、恨めしいのに…

ネ:ウミナギ。

   ネクリアは再び手を差し伸べた。

ネ:私たちと一緒に…世界を征服しましょう?

ウ:(こいつ…何で俺なんかを…?忌み嫌われる「犬神」だぞ?人間を喰う妖怪だぞ?なのに…)

   《ナギは私の家族だよ!私の大切な家族なの!》

ウ:(家族…?こいつは本当に親になるつもりなのか?いや、きっと言葉だけだ。俺の力が欲しくて言ってるだけにすぎない。だが…)

   ウミナギはゆっくりと手を出した。

ウ:(俺は心の奥底で思っちまった。嘘でもいい、また…「親」と呼べる存在といたい。「犬神」ではなく、「人」として…)

ネ:ようこそ。ウミナギ。

ウ:へッ…変な奴だな…お前…。とんだ化け狐だ。俺を丸めこむために平気で嘘つきやがって…

ネ:あら?別に嘘なんて言ってないわよ?私は、手下の事は子供のように愛してるわよ?

ウ:下手くそな嘘だな…

ジ:おい犬。ネクリアは別に嘘なんか言ってないぞ。

ウ:あ゙ぁ?

ジ:ネクリアは本当に、手下を家族のように大切に思っている。

ウ:(マジかよ…?こいつ…そんなこと言ってたら、手下が増えたら家族だらけじゃねぇか。何も考えてねぇんだろうな…)ハハッ…バカな奴だな…

ハ:あれ?

ジ:お?

ミ:およ?

ネ:あら?

ウ:あぁ?なんだ?

ネ:あんた今、笑ったわね?

ウ:笑ってねぇよ。

ネ:絶対笑ったわ!

ウ:しつこいな…

ハ:なんや、あんさんも笑えるんやなー!

ミ:もっと笑顔でいるといいよ~。

ウ:うるせェ!

ア2:信じられない…

ネ:あら、アルトア。いたの?

ア2:ウミナギが笑うなんて…人間の姿になってから初めて見た…

ネ:ふふん、私といればもっと笑うようになるわよー?

ハ:せやな!

ア2:(たしかに…この者たちといれば、ウミナギはきっと…)

ネ:さぁて、行くわよ。ジャング、ミョンガー、ハリイノギョ、…ウミナギ!

ウ:…おうッ。

   ウミナギはネクリアの手下になった。ウミナギは未だにネクリアを完全に信頼したわけではない。

   でも、ウミナギの心の中の鎖は、少しずつ、解けてきたのかもしれない…

 

                               続く

 

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2011‎年‎2‎月‎17‎日作成