04 木が輝く夜中

   "禁忌"。それは読んで字の如く、決して犯してはならない禁じられたもの。

   この世の能力は数えきれないほどある。その能力一つ一つには技がある。そして、能力一つ一つに"禁忌"もある。

   "禁忌"は決して使ってはいけない技。唱えてはいけない呪文。その術一つで何かを消し去る。

 

   獅子魚の島の洞窟

人間2:あれ…?あいつは?

ネ:あの人は大地へ還ったわ。

ミ:大地へ還った?どういう意味~?

ネ:アースサタン。直訳で大地の憤怒。

ミ:ん~?サタンって憤怒なの?

ジ:サタンとは悪魔の名前だ。7つの大罪の一つである、憤怒の象徴とされる。

人間3:おい!だからあいつをどこにやったんだよ!

ネ:そのままの意味よ。大地の怒りに触れた人間は、大地によって大地に還された。

人間2:大地に?…まさか、生き埋め!?

ネ:生き埋め?随分生温いこと言うわね。

人間2:え?

ネ:だからー、大地に還ったのよ。生きる前のね。

ミ:いまいちわからないな~?

ジ:ネクリア。抽象的すぎだ。かっこつけたいのはわかるが、伝わらなければ意味がない。

ネ:あらそう?

ジ:俺が説明する。即ち、先程の人間は大地に沈められ、既に人間ではなくなったということだ。

ネ:あんたも似たようなものじゃないの。よくわからないわ。

ジ:ネクリアよりは解りやすいだろう。

ミ:つまり~?

ジ:つまり、あの人間は大地の力で分解されたんだよ。

ミ:分解?死んじゃったの?

ジ:死ぬということではない。いや、むしろ生きている。人間として生きていないだけでな。

人間2:わけわからん…何が言いたいんだよ!

ネ:まだわからないの?頭悪いわねー。この術は"禁忌"。それは決してしてはいけないこと。

ミ:ん~。僕はなんとなくわかったかな~。つまり、あの人間は地面に埋められて、栄養になっちゃったってことでしょ?

ネ:栄養…まぁそういう考えでもいいわね。

ハ:(なんなんやこいつら…"禁忌"なんて聞いたことない…そもそもなんで一般人がそんな技を使えるんや?)

ネ:とにかく!そこの人間たち。あなたたち…まだ抵抗する?

人間2:と、とんでもない!大地の栄養になんてされてたまるか!

   人間たちは逃げていった。

   その後ネクリアたちは、獅子魚たちを檻から出し、撃たれて死んでしまった獅子魚たちを弔った。

ハ:あんさんら、おおきにな。わざわざ墓まで作ってもろて…

ネ:これくらいしか出来なくて申し訳ないわね。

ハ:いや、十分や。感謝しとるで。

ネ:…何も聞かないのね。

ハ:たしかに気にはなっとるよ。あんさんは一体何がしたくてわいを手下にしたい思ったんか。でも、わいはあんさんらを信じとる。せやから聞く必要はない。

ネ:私たちは…世界を征服しようとしているのよ。

ハ:世界を?随分ド派手な夢やな。

ネ:まぁね。でも、私たちは本気。それぞれ、この世界を変えたいって本気で思ってる。

ハ:出来るんか?

ネ:出来るか出来ないかじゃなくて、やらなきゃいけないのよ。あんな犯罪者たちを野放しにする世界なんて…誰かが変えなきゃいけない。

ハ:そうか…正直、そんなことは不可能やと思う。けど、なんでやろな?…あんさんらやったら、本当にしてくれそうな気がするわ。

ネ:それを踏まえてもう1度お願いするわ。ハリイノギョ、あんた…私の手下にならない?世界を征服して、犯罪者たちを消すのよ。

ハ:こっちも同じ事を言うで。わいはこの場所から離れられへん。けど……本当に世界を変えられるなら…変えたい!

ネ:…ついてきなさい、ハリイノギョ。

   ハリイノギョは静かに頷いた。

獅子魚:ハリイノギョ…行くのか?

ハ:ああ。わいは…皆の為に、この人に協力する。皆が安心して暮らせる世を…わいが作ってくる。

獅子魚:そうか…がんばれよ!

ハ:おおきに…皆っ!

   ネクリアたちは、獅子魚の島を後にした。

ネ:あ゙っ!

ジ:なんだよいきなり…うるさいな。

ネ:大食いコンテスト忘れてたぁぁー!!

   この時すでに、コンテストはとっくに終わっていたのだった。

ミ:ああ、あったね~そんなの。

ネ:賞金がぁぁぁ~…

ジ:諦めろ。

ネ:ぁぁぁ~…

ミ:きっと来年があるよ~。

ネ:そうね!来年こそはきっと優勝よ!

ジ:優勝も何も出場すらしてないだろ。

ネ:うっさいわねー!優勝ったら優勝よ!

ジ:来年の事を言えば鬼が笑う、だな。

ネ:鬼?鬼なんてどこにいるのよ?

ジ:ことわざだっての。

ハ:ははっ。やっぱあんさんらおもろいわ~。

ネ:ふふ…あんたも、参加しなっ!

ハ:そんじゃー遠慮なく!

   こうして、ネクリアには2人目の手下が出来た。

 

                               続く

 

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2011‎年‎2‎月‎11‎日作成