002 虹色の子供

グ:おとうさーん!おかあさーん!

グラン父:おぉ。おかえりグラン。

グラン母:あら?その子は?

グ:えっとね、この子はヒイカだよ!

ヒ:初めまして。

   ヒイカは愛想のない顔で挨拶した。

グ:ヒイカってね、すごいんだよ!お店にいた悪い奴らを一撃で倒したんだ!

グラン父:なんだって?

グ:すっごく強いの!

グラン父:そうかそうか。それは頼もしいな。

グラン母:さぁさぁ。玄関で話すのもなんだし、あがって。

ヒ:お邪魔します。

   そのままリビングに向かった。

グ:でね、虹色の音符でどばーって悪い奴らを倒したんだ!

グラン父:それはすごいな!いったい、そんな力をどこで習ったんだい?

グラン母:きっとおうちがそういう家系なのよ!

グラン父:いやいや、きっと英才教育にきまってる!

ヒ:(…勢いできちゃったけど、どうしよう?)

グ:まってよ。ヒイカは力について話すのが嫌なんだよ。聞かないであげて。

グラン父:わかった。そういうことならもう聞かないよ。

グラン母:お父さんとお母さんは?帰ってこなくて心配してるんじゃないの?

ヒ:え…(どっちもいない…けど、そう言えば逃げられる。)そうですね。それじゃあそろそろ…

グ:ダメ!

ヒ:え?

グ:おうちに電話しようよ!そうして、ヒイカは今日泊まってもらう!

グラン母:グラン!そんなこと言っちゃいけません!ごめんなさいね。

ヒ:い、いえ…

グ:ダメなの!このまま帰っちゃうと、二度と会えない気がするんだもん!

グラン父:こらこら。わがまま言うんじゃないぞ。ちゃんとお友達にばいばい言って。

グ:いやだ!ヒイカはこのままだとどっか行っちゃう!

グラン母:だったら約束すればいいでしょう?また遊ぼうねって。ほら。

グ:うぅ…ヒイカ。また遊ぼうね?

ヒ:(まぁ、約束だけすればいいわよね。)いいわよ。またね。

グ:約束…だよ?

ヒ:ええ。

   ヒイカは家を出た。

ヒ:ふぅ。今日中にこの町を出なきゃね。

?:うふふ。見つけた。虹の子。

ヒ:誰?

ネクリア(以下ネ):私は魔女ネクリア。虹の子がこの町にいるって聞いてね。

ヒ:誰に?

ネ:今日食堂で騒いだんですってね。虹色の音符で悪い奴を倒した子供がいるってね。

ヒ:それで、わざわざ探してたってこと?ずいぶん手間のかかることをしてたのね。

ネ:ねぇ。あなたの名前はヒイカなの?

ヒ:そうよ。

ネ:嘘ね。

ヒ:どうして?

ネ:言葉だけではわからないけど、本来のあなたの名前は…緋衣香。違う?

ヒ:…よく調べたものね。

ネ:これくらい容易いわ。大きな国を破壊した子の名前くらい知ってるわ。

ヒ:!

ネ:ねぇ。私と手を組まない?

ヒ:え?

ネ:あなたと私ならきっとこの世を支配できるわ!絶対に!だから組みましょう?

ヒ:断る。

ネ:随分と早い返答ね。どうして?

ヒ:私は、一人で全てを支配する。そして、捻くれた奴らを消し去るの。

ネ:そう。残念ね。だったら、あなたには消えてもらうわ。

ヒ:私を倒すつもり?そんなことできるとでも?

ネ:私はこの世を支配し、神になるのよ。仲間にならないなら早めに潰してあげるわ。

ヒ:可哀想に。勝てないとわかってても挑むのね。

ネ:勝てると思ってるから挑むのよ。いくわよ!

ヒ:まぁ、せいぜい生きがるがいいわ。

ネ:『月の光線』

   ビィィィ-ン

ヒ:直線の攻撃なんて避けられるわ。『虹色の花束!』

   ビュンビュンビュンビュン

ネ:これはっ!?

   虹色に輝く大量の花弁がネクリアに向かって飛んでいく。

ネ:前方広範囲…ならば『火の山地獄!』

   ゴォォォォォォッ

   ネクリアは目の前に火柱をあげて防いだ。

ネ:まずは…動きを封じてあげる!『水の波踊り!』

   バシャァァァ

ヒ:(水の鞭が2本…自在に動くから避けにくいわね。)

   スッ

   ヒイカが少し地面から浮いたその時

ネ:(かかった!)『木の根操縦!』

   ズゴッ

   地面から木の根がでてきた。

ヒ:しまっ…!

   ガシッ

   ヒイカは木の根に捕まった。

ヒ:う…!

ネ:ふふふ…手も足も封じられて動けないでしょ?さぁ、降参して私の仲間になりなさい?

ヒ:断る。

ネ:そう。いつまで強気でいられるかしら?

   ギュゥゥゥ

ヒ:うっ!

ネ:その根はどんどんあなたを締め付ける。降参して仲間になるなら解いてアゲル。

ヒ:誰が…アンタの仲間になんか…

ネ:じゃあ、そのまま締め付けられて…死にな!

   ギュゥゥゥゥゥ

ヒ:うあ…ああ…!

ネ:(虹の子…もっと強いと思ってたんだけど…買いかぶりすぎてたみたいね。)

ヒ:う…

   ガクッ

ネ:あら?耐えきれずに気絶しちゃった?なんだかんだ言ってもまだまだ子供ってことかしら?

   ネクリアがほんの一瞬気を緩めた。だが、その一瞬がネクリアにとって命とりとなった。

ヒ:『レインボーフォール』

ネ:なっ!?(こいつ、気絶してない!?)

   ズドドドドドドドドドドドドドドドドドッ

ネ:がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!

   虹色の光線が滝のようにネクリアに降り注いだ。

ネ:ぐ…お前…気絶しているように見せたな!?本当は…気絶などしていないのに!

ヒ:当たり前よ。あんな弱々しい攻撃で私が気絶するわけないわ。

ネ:く…この…!

ヒ:それよりあなた、面白い技を持ってるのね。

ネ:え?

ヒ:あなたの仲間にはならない。でも…あなたを私の手下にはしてあげる。

ネ:な!?

ヒ:力の差は歴然。あなたの本気は私の半分にも満たない力に負けた。

ネ:あれで半分に満たないですって!?

ヒ:私はあなたの知ってのとおり一夜で国を滅ぼした。そんな私とあなたの差くらい誰でもわかる。

ネ:く…この魔女ネクリア様より強い奴なんて…

ヒ:随分と自信過剰ね。悪くはないわ。でも、力の差を見極めて喧嘩を売ることね。

ネ:…いいでしょう。あなたの手下になってアゲル。でも、それはあなたの力を見極めるため。勝てると思えば勝負を挑むわ。

ヒ:いいわよ。簡単にねじ伏せてあげる。

グ:ヒイカ!

ヒ:グラン!?どうしてここに…?

グ:今の勝負、見てたよ!

ヒ:!!

グ:やっぱりヒイカは強いや!僕も、僕も弟子にしてください!

ヒ:断る。

グ:えぇっ!?そのおばさんはいいのに僕は駄目なの!?

ネ:おばっ!?

ヒ:あなたは弱い。それだけよ。

グ:そのおばさんだって弱かったじゃないか!

ヒ:ネクリアはこれから先役に立つ技を覚えてる。だからよ。

グ:僕だってそれくらいの技!

ヒ:うるさいわ。

グ:でも!

ヒ:黙りなさい!

グ:ひっ!

ヒ:目障りよ。さっさと消えなさい。

   ヒイカとネクリアは静かに去って行った。

グ:ヒイ…カ…いっちゃ…いっちゃだめだぁぁー!

   グランはその場で泣いた。


 

                                続く

 

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